金融マーケットシミュレータ FMS
個人投資家のための金融マーケットデータ用ワークベンチ
金融マーケットデータ用ワークベンチ
以前、株式投資に関わる数理的手法をまとめたオンラインブック 「株式投資で学ぶ数理的手法」(node2p.opslabo.com)を書いたとき、現実の時系列データを簡単に利用できるワークベンチ的なツールが欲しいものだと思いました。そう考えたとき一番身近なのは、株価データに代表される金融マーケットデータです。
現実の金融マーケットデータを使って本当に有用な予測や分析ができるのかを試してみようと思いツールの開発に着手しました。
予測モデルを試したり、ペアトレーディングを実装したり、昔作っていた株取引の学習ツールを引っ張り出して組み込んだり。試行錯誤しながら強化を続けてきた結果それなりの恰好のものができてきました。
このワークベンチは(仮称)金融マーケットシミュレータ (Financial Market Simulator,FMS)と呼びます。

データの蓄積
分析にせよ予測にせよ、まずデータがないことには話になりません。
株価はもちろん、経済指標の発表、社会・政治イベント——いろんな種類のデータを、なるべく手間をかけずに集め続けられる仕組みが必要です。
なのでFMSは、データ収集のUIと自動化にはかなり力を入れています。「気づいたらデータが溜まっていた」という状態を目指しています。UIは改善の余地大ですが、今のところ以下のデータを取得することができます。
マーケットデータ
- 個別企業株価:東証上場全銘柄
- 株価指数:NYダウ、ナスダック総合、S&P500、ラッセル2000、VIX指数、SOX指数、日経平均、TOPIX
- 米国債利回り:10年、5年、3年、13週
- 為替レート:米ドル・円、ユーロ・円、等
- 先物:原油(WTI)
経済指標(経済イベント)
まだ収集を始めた段階です。活用が今後の注力テーマです。
- 米国労働統計局:雇用統計(NFP・失業率・平均時給)、CPI(総合・コア)
- 日本銀行:短観(大企業製造業・非製造業 DI)、金融政策決定会合(MPM)声明・議事要旨
- e-Stat:日本CPI(総合、コア)


スクリーニング
投資対象の株式銘柄を探索するためのポータルがスクリーナーです。単株の探索、ペアトレード銘柄の探索機能を整備しています。
証券会社にアカウントをつくれば高機能なスクーリングツールを自由に利用できるのですが、データ分析に関心を持つ個人投資家の立場では結局「自分に合った」道具が欲しくなることは必然です。
開発当初は、回帰的モデルや状態空間モデルをベースとした予測モデルを構築して学習により最適化するプロセスを追及していました。しかしこれはなかなかハードルが高く、少々工夫したくらいでは安定した予測精度は出ませんでした。
そこで今は、「予測する」より「統計的に有効なシグナルを探す」という方向でトライアンドエラーを繰り返しながら、分析ツールを少しずつ拡充しています。その典型的な応用としてペアトレードのための機能を実装している点が大きな特徴になっています。
ペアトレードは、二銘柄の株価スプレッド時系列が示す定常性を統計的検定ツールを使って探索し、取引を行う数理的な手法です。実際の取引にこの手法を適用する場合、信用取引が前提となりますので、現物株取引にはない固有のリスクを認識しておく必要があります。そのためFMSでは損切り手法の有効性を確認する、銘柄ペアの過去の動向を可視化する、などシミュレーション的手法によってリスク管理する「バックテスト機能」を取り入れています。
最近では当たり前のようにAIによるマーケット分析情報を目にします。このスクリーニングメニューでも生成AIのAPIを組み込み、探索銘柄に対するAIによる目利き情報を出力できます。しかし本当にAIの情報が投資に使えるのかは、けっこう疑ってもいます。そこでAI分析で出力した投資候補を後述する仮想取引シミュレーションで投資実験を行い成績を評価できるようにしました。
今後は、機関投資家やクオンツファンドが使う手法——たとえばIC(情報係数)のような「どの指標がどれだけ予測に効いているか」を測る技法——こういったものを、個人投資家でも試せる形で組み込んでいきたいと考えています。



リスクなしで株取引を試す
株取引は、失敗すると普通にお金が消えます。そこで「仮想の資金で自分の取引戦略にマッチした銘柄を売買して損益を追う」というシミュレーション機能を入れたのですが、これが意外と学びになります。
非常に平たく言うと、実際の取引では「損切り」はやれそうでできません。それは「理」よりも「情」が行動を縛るからだと思います。しかしシミュレーションならば何のためらいもなく売買をクローズできますし、スタイルを変えて何度でも試すことができます。
実際に累計した損益数字が見えると、現実での取引に対する姿勢も少しずつ合理的になってくるような印象を持っています。
この仮想的な取引機能は、最新の株価データをシミュレーションに取り込み毎日運用を進展させる「株シムRT」と、自分の銘柄スクリーニング戦略を過去の期間で適用する「株シムBT」から構成されます。RTはReal Timeの略。BTは Back Testの略です。
株シムRTでは複数の取引グループをセッションとして同時並行で運用しますので、異なる投資戦略の有効性を効率的に評価できます。
なお、ペアトレードのバックテスト機能は前述の通り、スクリーナーメニューから利用できます。



開発状況を公開
ソフトウェアはある程度安定的に動作していますので、このタイミングで自分以外の投資に関心をお持ちの方や数理的な仕組みに関心のあるかたから意見を聞きたくなりました。
そこでまだ荒削りな部分もありますが、実際の使用状況をこのサイトで報告していこうと思います。例えば上述の株シムRTの運用状況は右のような画面例で公開する予定です。
システムの機能・仕様は利用ガイドにまとめていますので興味のある方は node2.opslabo.com/help/viewer.htmlへアクセスください。リンクはこちらです。

ゲスト利用
FMSはマルチユーザー運用、登録時のメールアドレス認証、ログイン時の多要素認証に対応しています。
公開情報だけではなかなか有用性を確認しずらいというご意見もあると思いますので、実際に使ってもらってフィードバックをもらいながら育てていこうと思っています。
運用リソースの制約があるため、試用アカウントを三個だけ用意しました。原則1か月間を利用期限としています。ゲスト利用を試してみたい方は本サイトのサークルディレクトリへアクセスください。「在庫切れ」と表示されている場合は、すでにアカウント利用中の可能性が高いので何日か間をおいて再確認してください。あるいはお問い合わせいただければ利用可能な時期をお知らせすることも可能です。
【試用での機能的制限事項】
- あらかじめ定義された試用アカウントを払い出します。新規のアカウント登録はできません。
- マーケットデータはあらかじめセットされており、独自にダウンロードすることはできません。
- AI分析機能は運用状況に依存して利用回数の制約が発生することがあります。
FMSのサービス全体に関わる規約についてはFMSサービス利用規約を参照ください。

📖 参考 株式投資で学ぶ数理的手法